南の果て、野菜不足と戦う毎日。 羊のバーベキューに舌鼓を打ちながらも ふとした拍子に思い出すケンタッキーフライドチキンの味…。ああ、望郷。
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昔見た映画の話です。
4月14日

その日は、12月のクリスマスの2日前、暖かい日でした。
老婆は、外国から来たその男に向かってポツリと言いました。

『うちの息子がね、もう30歳になるんだけれども、今シーズンが
 終ったらこの田舎を捨てて、町へ出て働くっていうんだよ。』

こう言って、知り合ったばかりの外国人に語る彼女は、観光地で
民宿のような宿屋を経営する、67歳のご婦人です。ご主人が昨年
亡くなってからは、30歳の息子さんが力仕事、ご本人が宿泊客の食事の世話や、掃除などをして、2人でその宿をやっていました。

割と評判の良い民宿で、夏の観光シーズンには、結構流行っていたようです。男がその老婆と知り合ったのは、ほんのチョットした偶然からでした。

ある日の夕暮れ時、スーパーで買い物を済ませた彼女が、程近い自宅兼民宿に帰ろうとして歩いていると、突然、スーパーの袋が破れてリンゴやらパンやらが散乱してしまいました。男は特別、気にもせずにリンゴを拾い集め、スーパーに戻って代えの袋を貰ってきました。老婆は男の予想以上の感謝をし、『すぐ近くだから、是非
コーヒーでも飲んでってくれ』といって、半ば無理やり、男を自宅に連れ帰りました。

男はそこで、その老婆の生活、上述の息子さんの事などを聞かされ
た訳ですが、正直な話、その時点で男は『迷惑だな。早く帰りたいな』くらいの感覚しか持ち合わせない、冷たい男だったのです。

そんな男に、老婆は飽きもせずに語り続けます。

『あんたもうちの息子と同じくらいの歳だけど、やっぱり都会の方
 がいいかい?田舎はダメかねぇ。』

『こんなところに来て、お母さんは何て言ってるの?反対しなかっ
 たかい?』

などなど、その男の事情を根掘り葉掘り聞いた後、

『もいっぱい飲むかい、コーヒー?』

男は冗談半分に、

『できればビールの方が・・・』

老婆は笑いながら冷蔵庫から瓶ビールを出して注いでくれたのです。きっと、彼女の息子さんのために買ってあったビールでしょう。よく冷えていました。

結局ビールを2本もご馳走になり、彼女の息子さんが帰ってくるまで2時間以上に渡って、息子さんの話を中心に聞かされたのでした。彼女が結論としてその男に語ったのは、

『今、息子が出て行ったら、もう二度と会えないかも知れないよ
 ね。民宿閉めるのも残念だけど、私も歳だから、息子に会えなく
 なるのが辛いんだよ。』

『でもねぇ、それでも行くなとは言えないんだよね。そんな事言っ
 たら死んだじい様に怒られるしね。この子は男の子だ!ってのが
 じい様の口癖だったからね。』

そして最後に

『あんたのお母さんもきっとおんなじ気持ちだよ。だからさ、あん
 たのやる事が終わったら、必ずお母さんのところへ帰りなよ。』

男がその老婆と話したのは、それが最初で最後でした。
彼女の息子さんとは、その時一度挨拶を交わしただけ。

そして、その老婆は冬を迎える前に旅立ちました。
知っていたのでしょうか。たぶんそうなのでしょう。

男は風の噂で、その老婆が長い旅に出た事を知りました。
そして、彼女の民宿の前を通り過ぎるたびに、あの息子さんの
姿を探すようになりました。

男は今でも、あの息子さんは間に合ったのだと信じて疑いません。
いえ、間に合ったのは、あのお婆さんの方かも。

長い冬がやってきます。


と、いうのがその映画のあらすじです。
よく覚えてるモンですね。ずいぶん昔見た映画なのに。
まるで昨日の事のようです。
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